愚民159

人はただ十二三より十五六さかり過ぐれば花に山風

入院2日目〜5日目

気胸の第一の関門は胸に刺したドレーンの痛みの克服で、これを過ぎると経過をひたすら観察するのみなので、特筆すべきことはさしてなくなる。

ただし、この痛みは完全になくなることはない。毎夜寝てると痛みで目が覚めるし、毎朝起きるとしばらくは動けない。振り子のように徐々に落ち着いてはくるが、毎日新鮮に痛い。なので、結局夜はロキソニンのお世話になることが多い。

また今回高熱こそ出なかったが、37度前後の微熱は絶え間なくある。たぶん生物として異物が侵入していることに対して拒否反応が出ているんだと思う。指先に小さなトゲが刺さっても痛むのだから、ボールペン大の異物が常に刺さっていたらそりゃあ痛いに決まってる。

2日目の夜、ふとした瞬間に咳き込んでしまった時が辛かった。咳き込むごとに激しい痛みに襲われるが、咳を無理矢理飲み込むとより息苦しくなり、一層咳が出るという悪循環に陥る。くしゃみは散らすことができるが、むせるとどうしようもない。地獄の苦しみだった。


歩くのも辛い。管が入っているため背筋を伸ばすと痛むので、革命のじじいダンスばりに腰を曲げて歩くことになる。肺に繋がっている器械(通称タッキー)をぶらさげた点滴棒に縋り付きながらよろよろと歩く。たぶん1日50歩くらいしか歩いてないが、疲れる。

それでもわりと動き回ってるので、看護師さんに「痛みに強いんですね」と言われる。「この病気、ほとんど若い男の人がなるんですけど、みんな痛い痛い言ってますよ」とのこと。個人差もあるだろうが、性差もあると思う。男は痛みに弱い。


胸に管が刺さってるのでシャワーには入れない。毎日蒸しタオルで体を拭く。背中は自分では拭けないので看護師さんにお願いする。看護師さんは皆さん天使のごとく優しい。戸塚さんが気胸で入院して、本当の人の優しさに触れた気がすると言っていたが、そう言いたくなる気持ちも分かる。

髪は2日に1度は洗ってもらう。髪からシャンプーの香りがするだけで、人間になれたような気持ちになる。


今日が入院5日目、とりあえず携帯型の心電図は外され、デジタリアンから人間になれたのは良かったが、レントゲンを撮っても肺は膨らんでいなかった。今日も写真をあげているが、タッキーには3つの部屋がある。一番左は胸から出た排液(赤っぽい水)を入れる部屋、真ん中は胸腔から出た空気が逆流しないように青い水で蓋をしている部屋。昨日まではこの二部屋しか使っていなかったが、とうとう第三の部屋を使うことになった。空気を積極的に抜く吸引部屋だ。ここには黄色い水を入れて、水のプクプク具合により吸引の度合いを確認する(んだと思う)。
赤、青、黄というと何かを思い出す。そう、ジャニーズ最強のポテンシャルを持ちながらジャニーズ史上最も不遇だったアイドルユニットNYCだ。黄色、つまり知念様はこんなところでも最後の切り札なのだ。知念様かっこいい!!


しかし、知念様が発動されると枕元の吸引機に繋がれっぱなしになるため、トイレ以外は全くベッドから動けなくなる。髪もおいそれとは洗えない。ベッドが世界のすべて、正岡子規の言う病牀六尺の世界である。
ここ数年、知念様に勝手に縛られて生きてきたが、こんなところでも知念様に縛られるのかと思うと、なんだか宿命的なものを感じる(知念様に迷惑)。