愚民159

人はただ十二三より十五六さかり過ぐれば花に山風

慟哭

連続幼女誘拐事件をめぐる捜査一課長佐伯の懊悩を中心に描いた小説で、貫井徳郎のデビュー作。この人って流行っているのね。どこの本屋に行っても平積みで、ポップが付いているところも多かった。北村薫の「慟哭、練達、仰天」というものものしい帯に圧倒されてなんとなく買ってしまったけれど、はっきり言ってかなり早い段階でオチは読めた。この前読んだ『プリズム』もそうだけど、あんまりひねらない作家だよなぁ。解説でゴタゴタ言っているけれど、これはミステリではないだろう。まだ2冊しか読んでいないのに作家語りもないが、『プリズム』『慟哭』と読んでいて、現代の家族の在り様をできるだけ真摯に描こうという姿勢に好感が持てた。下手にミステリと銘打つより(別に銘打ってはいないのか?)、普通の小説だと思って読んだ方が面白いと思う。新興宗教といったらオモイデ教だなぁ。
『慟哭』貫井徳郎 創元推理文庫 ISBN:4488425011