愚民159

人はただ十二三より十五六さかり過ぐれば花に山風

亀梨兄弟の戦い

野球をしている亀梨和也はジャニーズファンなら一度は拝むべきものである。普段飄々とカツンをこなす(アイドルをこなすというよりカツンをこなすという言い方の方が似合うと思う)亀ちゃんが唯一剥き出しの自分を見せる時なんじゃないだろうか。


野球という訳語を作った正岡子規は、野球の説明をする中で

走者はただ一人敵陣の中を通過せんとするが如き者、球は敵の弾丸の如き者なり。
(『松蘿玉液』)

と書いた。他にもアウトのことを「討ち死」、ベースのことを「鬼事のおかのごとし」と例えたりしていて、読んだ当時は「なんて大仰な!」と笑ったのだけれど、球を投げている亀ちゃんの目を見ているとそういう表現の方がむしろしっくりくるように思えてくる。


野球をしている間、亀梨さんの目は一瞬も笑わなかった。村上さんのインタビューを受けている時も一応口元だけは笑顔の形になっていたものの、目は殺人モードのままだった。ジャニーズ野球大会なんて、出場者も客も浮かれモードでやっているのに、亀梨さんだけは目をギラつかせ黙々と真剣勝負にのぞんでいる。彼にとっては野球だけは譲れない場なんだろう。亀梨さんって、現代っ子らしく飄々と色々なことを器用にこなせてしまう人だと思っているので、こういうかたくなさを見るとすごく好意的な意味で意外だと感じてしまう。この底にあるかたくなさこそが亀梨和也の魅力なんだろう。


ジャニーズ野球大会といえば出てくるのが亀梨弟だ。始めて顔を見たが「ずっと野球をしていたら亀ちゃんはこんな顔になっていただろうな」というような顔だった。恒例のJ2000だと兄弟でバッテリーを組んでいるらしいが、今回ジャニーは何を思ったか亀梨弟を亀梨さんの敵チームの代打として起用してきた(ジャニーさんがチーム分けを決めてるのか謎だけど)。
浮かれモードだった会場も亀梨兄弟対決の瞬間だけは野球ムードになっていた気がする。少なくとも私はその瞬間だけはまるちゃんのこともやっさんのことも忘れて、球の行方だけを追っていた。思わずそうなってしまうくらいこの兄弟の対決には鬼気迫るものがあった。なんというか2人にしか分からない歴史の重みがあった。亀梨さんは弟にだけは打たれたくなかっただろう。結局打たれて弟を塁に出すことになった時は悔しかっただろうなぁ。