愚民159

人はただ十二三より十五六さかり過ぐれば花に山風

「よく遊びよく学べ」に感じる居心地の悪さ

最近、才能が欲しくてしょうがありません。16歳の知念様はとても素敵で、私はどうにかして16歳の知念様を写し取りたいと思っているのに、その手段が何もないんです。創作には命が宿ると思います。オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』という小説には歳をとる絵が出てきますが、これは「創作物は決して朽ちない」ということを逆手にとった小説だと思うんです。だけど、私には詩を作ることもできなければ、絵を描くこともできず、映画を撮ることもできなければ、小説を書くこともできない。私にできることは自分が摂取した知念様の情報をまとめて吐きだすだけで、そこに創作的な要素は何もなくて、そのことが歯がゆくてしょうがないんです。
けれども、自分がこれしかできない以上、もうこれをひたすらするしかありません。質で勝負できないなら、量で勝負するしかありません。これからの1ヶ月、知念様についてひたすら語るという行為をいつも以上に重ねて、16歳の知念様を私なりに少しでも写し取っていければと思います。

というわけで、今をときめくNYCの新曲について思っていたこと。




「よく遊びよく学べ」はMステで初めて聴きました。その時、知念様のかっこよさに興奮する一方で、聴いていると妙な居心地の悪さを感じずにはいられませんでした。

「NYCの新曲の歌詞がどうやらいやらしいらしい」という噂を聞いた時、私はまっさきに「またma-sayaのやつがやってくれたな!」と思いました。ma-sayaさんは多くのジャニーズ曲に携わっている作詞家の方で、JUMP関連では「YOUR SEED」「情熱JUMP」「Memories」「Too Shy」などを作詞なさっています。どれも好きな曲なのですが、私にとって一番印象的だったのは「真夜中のシャドーボーイ」でした。そのことについてはここ(id:ariyoshi:20090502:1241225017)で長々と語っているので割愛しますが、歌い手と大部分の聴き手にとっては単なる大人っぽい曲でしかない歌の裏側に、大人にしか分からないいやらしさを詰め込んでいて、「ma-sayaって本当にひどいな!」と心から思った衝撃的な曲でした。この「ひどい」というのは私にとって最上級の褒め言葉です。なんだかんだで、シングルでは一番好きな曲です。

ma-saya曲の中でシャドボと並んで「本当にひどいな!」と言いたくなる曲といえば「NYC」です。これ、ほんっといやらしい曲ですよね。だって「愛じゃない」のに「いいじゃない」と言いながら「Kiss me baby」した挙句「Give me もっと」ですよ。韻を踏んだポップな歌詞と曲調に誤魔化されていますが、この歌はかなり軽薄なひと夏の恋を歌った曲なんです。だけど、このことに気付いている人はたぶんあまりいない。本人たちもファンのHey!Say!ガールズたちも歌詞の意味なんて深く考えずに、ただその弾むような曲調に身を任せているのでしょう。

ma-sayaさんは、とにかくそういう歌詞を書くのが抜群にうまい。ぱっと見ただけでは綺麗な薄紙で包装された心おどるプレゼントなのに、その薄い紙を剥ぐと中からは思いもかけないほど生々しいものが次から次へと出てくる。別に剥ぐ必要はないんです。そのまま受け取って「きれいだなぁ」と眺めていればいいんです。けれども、欲望に満ちた大人ほどその中身を暴かずにはいられないし、ma-sayaさんは期待通りのものを内包しておいてくれているんです。


さて、今回NYCの「よく遊びよく学べ」を作詞したのはma-sayaさんではなく羽場仁志さんでした。羽場さんはジャニーズでは滝つに数多く楽曲を提供しています。「夢物語」「カッコつかないTonight」「愛想曲」「Venus」「SAMURAI」「Ho!サマー」など、この人の作る曲はまっすぐで分かりやすくて楽しい。それが今回のNYCの新曲に関して言えば、どうしようもない居心地の悪さにつながってしまったんだと思います。

中山 でも歌詞の中に意味深な部分が1か所あるよね?
山田 うん、ある!
中山 「僕らは何にも知らないんです」
山田 「制服なんかで・・・」
知念 「隠さないで!」
中山 「合言葉は?」
山田 何を言うのか(笑)。きっと言いにくいところなんだろうね〜(笑)。


(『月刊 TV navi』2010年12月号)


そう、分かりやすさのあまり、歌い手である彼ら自身にもこの歌のいやらしさが伝わってしまっているんです。
ma-saya曲ではたぶん歌っている本人たちはいやらしさに気付いていません。だから、マジックミラーの向こうを眺めるような気持ちで、大人たちは安心して一方的ににやにやとできる。それがこの曲では開けっぴろげになってしまっていて、まるで思春期の娘とテレビドラマを見ていたらラブシーンが始まってしまった時の父親みたいな気持ちになって、聴いているととても居心地が悪くなってしまうんです。しかもチャンネルを替えたいけど、意識しているみたいだから替えるに替えられない。

私は滝つ信者なので、基本的に羽場さんの曲は大好きなんですけど、この曲に関して言えば、16歳・17歳という年齢の子が持つまっすぐさと、羽場さんのまっすぐさが組み合わさって、直視するのが辛いくらい真っ向エロな曲になってしまっているような気がします。私は秋元康が苦手なんですけど、何がいやってアイドルに「友達より早くエッチをしたい」と歌わせてしまう開けっぴろげなエロさがいやなんです。うら若きアイドルが表現させられているものの裏の意味を読みとくことは、とても隠微で悦楽的な作業です。それがないアイドルなんてただのポルノで、私はアイドルにそんなものは求めていないんです。

今回、どこまで狙ったのかよく分からないのですが、「よく遊びよく学べ」はきわめて秋元康的な曲だと思います。私はなんだかんだいって、AKB48の「Dear my teacher」とかエロくて大好きなので、これはこれでいいんですけど、でも、もうちょっと隠微な楽しみのできる曲の方が好きなんです。こんなにアイドルとしてのスキルが高い3人に歌わせるんだから、もっと密やかにあざとい曲を歌ってほしかった。あけっぴろげすぎてなんとも居心地が悪い。


ただ、この曲に関する雑誌のインタビューを読んでいると、山田くんやゆまたんは「恥ずかしい」とか「意味深」とかよく言っているんですけど、知念様は一貫して「かわいい」「楽しい」という感想を貫いているんですよね。先に引用した部分でも、知念様は「意味深」の部分に深くはコメントしていませんでした。

いや、僕は楽しいですね。いつもと違う風に歌えたし、あんまり意味は考えずに(笑)、なんかノリでって感じだったから。


(『TVぴあ』2010/11/2号)

歌詞は子供向けっぽいんだけど、いろんな世代にも伝わる内容。僕は"落書きで埋めたテキスト"の部分が好き!


(『ザ・テレビジョン』2010/10・23−10・29)


あえて、その部分には目を向けない知念様。極めつけはノンノです。

山 (略)出だしの『ドキュンとしちゃって』のところは、レコーディングの時に恥ずかしくて、何回も間違えちゃったよ。
中 確かに照れちゃうよね。僕のパートで『制服なんかで隠さないで』ってフレーズがあって。えっ?どういうこと?ってドキドキした。
知 まぁ、思春期ってことだよ(笑)。僕は、盛り上がりそうな曲だから、早くライブで披露したいな!


(『non・no』2010/10)


「思春期」の一言で華麗に流して、アイドルとして正し過ぎるコメントをする知念様。どんな曲を与えられても清純派アイドルを貫く16歳の知念様かっこいい!!知念様の言葉を通すと居心地の悪かった曲もかわいくて楽しい曲に思えてくるから不思議です。まるで、思春期の娘と父親が気まずくなっている居間に来て「私、これよりバラエティが見たいわ」とチャンネルを替えてくれる母親のような安心感。


知念様は解釈する人で、どんなものでも自分の飲み込める形に変えるし、私たちが受け入れやすいように変えてくれるんですよね。私は知念様のそういう性質のおかげでロミジュリも受け入れられたんです。知念様が納得してやることなら安心して私も飲み込めます。これからもアイドル知念様を信じて、おたくの道を突き進んで行きたいと思います。