愚民159

人はただ十二三より十五六さかり過ぐれば花に山風

ミュージカル『テニスの王子様』青学VS氷帝(7/18・13:00開演:TOKYO DOME CITY HALL)

懐かしのJCBホールあらためTDCホール。TDCは「とっても・大好き・知念様」の略だと勝手に思ってます。

私にはいわゆるイケメン俳優と呼ばれる方々に対する知識がほとんどありません。はっきり言ってあまり興味もありません。ジャニーズ好きなのにと言われるかもしれませんが、元々私はアンチジャニーズで、むしろジャニーズにハマってしまったことが想定の範囲外の出来事でした。根本的にあまりこういう華やかな世界には興味がないんだと思います。
今回、ご縁があってテニミュを観に行かせていただきましたが、その少し前にDVDを見せていただくまで出演者の方も一人も知りませんでした。テニプリの原作も本当に最初の方しか読んでいませんし、アニメも見てません。そんなテニミュの知識も経験もゼロなジャニヲタがテニミュを見て覚えたささやかな感動の記録です。




私が一番感動したのは「3人でダブルス」という曲です。
強豪・氷帝との戦いを前に、ダブルスで出場予定の青学ゴールデンペア大石・菊丸のうち大石が怪我をしてしまい、菊丸・桃城という急ごしらえのダブルスで闘うことになりました。しかし、相手は強豪校、そんなやっつけのダブルスで戦って敵うはずがありません。二人の奮闘むなしく、試合の流れは完全に氷帝に向いていきます。
もう駄目だ、誰しもが思った時に突然コートに怪我をしたはずの大石の歌が響き渡ります。大石はとにかく諦めるなと歌で2人に語りかけます。そして、俺たちは3人で戦っている(ダブルスなのに)、3人で戦えば勝てないわけがないという内容のハイパーポジティブな歌を、最後は3人で高らかに歌い上げるのです。ここから、試合の流れは一気に逆転し、青学は無事勝利を収めます。この歌が始まって、場の空気が一変するまでの流れに異常な感動を覚えました。


私はこの数日プレゾンを見ていて、アホみたいな感想なんですが、とにかくみんなダンスが上手いなぁと感心していました。ジャニーズというと馬鹿にされがちですが、ここまで踊れる人たちが好きだということに誇りすら感じました。
それに比べて、テニミュの方々ははっきりいって歌もダンスも上手くありません。いや、乾役の方は総合力が高かったし、忍足役の方も今すぐ帝劇の舞台に立てるんじゃないかというくらい異常に歌が上手かったんですが、上手い人が逆に浮いてしまうくらい、全体としてのレベルは高くありませんでした(ただ一年生トリオだけはものすごくレベルが高かった。なんであの子たちはあんなに上手いの?)。

だけど「3人でダブルス」を聴いて、今までジャニーズ舞台で感じたことのなかった、音楽が持つ原始的な力のようなものを強く感じたんです。

私はミュージカルを見るのが苦手です。ミュージカルナンバーを聴くことは好きなんですが、ミュージカルを見ることは苦手なんです。ミュージカルは大切なことを歌にして伝えますが、私は歌詞を聴きとって意味を理解するまでに時間がかかるらしく、考えている途中でいつも話を見失ってしまいます。大事なことは普通にちゃんと喋ってくれよと思ってしまうんです。
ジャニーズ舞台は曲とストーリーの関連性が強くありません。歌詞が分からなくても話にはついていけます(というか、そもそもストーリーが破綻しすぎていて、根本的に理解できないことの方が多い)。だから、ジャニ舞台は平気なんです。対して、メッセージ性の強い作品であればあるほどミュージカルは苦手でした。台詞を音楽に乗せて伝える意味がいまいちよく分からなかったんです。


けれども、「3人でダブルス」を聴いて、その考えが変わりました。大石の歌が流れた瞬間、その場に満ちていたネガティブな色彩は一層され、一気に明るくて前向きな空気が場を包み込みます。この場面は普通に台詞を言っていたのでは、ここまで盛り上がらなかったことでしょう。シンプルな歌詞、ポップな曲調、そして出演者の(正直そこまでうまくない)全力の歌唱とラケットを使ったダンス、このすべてが絶妙に組み合わさって、このダブルス戦の逆転劇を最大限に盛り上げているんだと思うんです。「3人でダブルス」を見て、音楽とパフォーマンスで伝えることによってその効果が2倍にも3倍にもなることを実感したんです。テニミュにミュージカルの意義を教えてもらうことになろうとは夢にも思いませんでした。


私はここに出演している方がどんな事務所に所属しているのかも知りませんが、事務所も年齢もバラバラな人間が、この「テニスの王子様」というミュージカルの元に集まって、この作品を通じて一つになっていき、やがてこの作品の終わりと共に離れ離れになっていくのかと思うと、この世界自体がとても儚いような気がしてきました。
テニミュには出演者自身の成長もうまいこと作品に組み込まれているような気がします。ジャニーズ舞台のように本名と役名がイコールになるほど、役と本人が密接に繋がっているわけではありませんが、経験も実力もあまりない出演者がこの舞台を通じて成長していく姿は、中学生たちの全力テニスという世界観に彩りを添えています。
去年、同じ会場で「SUMMARY」という素っ頓狂な見世物にひと夏を費やした少年たちがいました。彼らがそこで培った絆はそのまま持ちこして自分たちのものにすることができます。けれども、テニミュはいつかはバラバラになる人たちの集まりです。まるで本当に学校のように最後には卒業していくんです。それが儚い。

テニミュもサマリーもよく知らない人から見たら滑稽です。でも、その滑稽なものにすべてを捧げて、見に来る人たちを楽しませようとしてくれる彼らは尊いです。私は来月も引き続きこの場所に来るんでしょうが、その度にテニミュの強さと儚さと尊さを思い出すんだと思います。そして、知念様の尊さを全力で崇拝する日々が始まるんだと思います。


私は元々すっとこどっこいなものと青春ストーリーが好きなので、勢いのあって分かりやすい楽曲や群舞は本当に楽しかったです。三ツ矢雄二って天才なんですね。
ちなみに、桃城とリョーマのやりとりがかわいくて、基本的に試合中でもしょっちゅうベンチを見ていたんですが、一緒に見ていたYさんに「いきなりベンチ見るってどうなの?」と激しくつっこまれました。でも、私は初めて行ったジャニーズのコンサート(キンキコン)でバックで踊ってた風間俊介にはまった人間なんで……。誰も見てないとこでリョーマに耳打ちしたり、肩を抱いたりしてる桃城がかわいかった。
また機会があったら行きたいです。