愚民159

人はただ十二三より十五六さかり過ぐれば花に山風

花の色はうつりにけりないたづらに 〜ショタでも分かる少年愛講座〜

<登場人物>
ありよしさん:仮名。いい歳した大人。
戸塚くん:仮名。中学2年生。ジブリコッペパンと納豆とサッカーをこよなく愛するロックン少年。


※登場人物は実在の人物とは一切関係ございません。また色々語っていますが、中学生の時にならった古典の知識で話しているので、色々と間違っている部分があればこっそり教えて下さい。


T「ありよしさんはなんでしょうねんがすきなの?」
A「……ねぇ戸塚くん、君は桜は好きかしら?」
T「さくら?うん、すきだよ。すっごくすきというわけじゃないけど、ぶわーってさいてるのをみるとわくわくする」
A「そうね。戸塚くんに限らず、日本人はみんな桜が好きよね。開花予想なんてニュースでやっているくらいだもの。よっぽどのことがない限り、桜を嫌いだという日本人はいないと思うわ」
T「うん、そうかもしれない。みんな、おはなみとかすきだもんね」
A「じゃあ、なぜ桜はこれほどまで愛されているのだと思う?」
T「え?きれいだからじゃないの?」
A「綺麗じゃない花を探す方が難しいと思うけど」
T「そっか。たしかにおはなはみんなきれいだもんね。じゃあね、うーーんとうーーんと……なんでだろう?」
A「戸塚くんは無常観って言葉を知っている?」
T「むじょーかん?」
A「祇園精舎の鐘の声……」
T「あ、しってる!しょぎょうむじょうのひびきあり!」
A「よく知ってたわね。その『諸行無常』の『無常』のことよ」
T「いえるけど、いみはしらない!」
A「『無常』とは、『常』では『無い』ということ。すべての物事は移りゆき、変わらぬものなど存在しない。そういう考え方のことを無常観というの。無常といえば、鴨長明の『方丈記』の冒頭も有名ね。ゆく河の流れは絶えずして……」
T「しかももとのみずにあらず!」
A「あら、本当によく知っているわね」
T「なんとなくかっこいいからおぼえた!でもいみはしらない!」
A「そう……。とにかく、すべてのものは移ろいゆく、だからすべてのものは儚い、というのが日本人が古くから親しんできた無常観という思想なのよ」
T「こっぺぱんはしょうみきげんがあるからおいしいってこと?」
A「ちょっと違う気もするけれど……」
T「じゃあ、なっとうはしょうみきげんがあるからおいしいってこと?」
A「……食べ物の種類を変えても意味は変わらないわよ。まぁでも大体そんな感じよ」
T「よくわかった!」
A「(本当に分かっているのかしら?)」
T「で、むじょうかんとさくらと、どういうかんけいがあるの?」
A「ああ、そうだったわね。すべてのものは儚い、という無常観は、日本古来の『もののあはれ』の精神とあいまって、『儚いものこそ美しい』という日本人独特の美意識を生み出したの」
T「こっぺぱんはしょうみきげんがあるからおいしいってこと?」
A「またそれ……でもさっきよりも意味が近いかもしれないわ。桜はぱっと咲くけれど、すぐに散ってしまうでしょう?その儚さと潔さが日本人の心を魅了してやまないんだと思うわ」
T「しづごころなく はなのちるらむ、だね」
A「紀友則ね。あなた、意味が分かっていないわりにはナイスチョイスね」
T「てへてへ」
A「もしも桜が1年中咲く花だったら、日本人にこんなに愛されることはなかったと思うわ。桜は散るからこそ美しいのよ」
T「なっとうはくさるからこそおいしいってことだね」
A「そ、そうね。(ちょっと違う気がするけど)」
T「なっとうだけになっとく〜」
A「……」
T「あれ?そもそもなんのはなしだったんだっけ?」
A「さて、本題に戻りましょう。戸塚くんは私に聞いたわね、なぜ少年が好きなのかと」
T「うん、きいた。おかあさんがね、ありよしさんはしょたこんってやつなんだっていってたよ」
A「ち、ち、違うのよ!少年は桜と一緒なの!少年老い易く学成り難し、少年が少年でいられる時はあまりにも短いわ。満開になったそばから散りゆく桜の儚さを惜しむように、私は駆け足で過ぎ去ってしまう少年の時に世の無常を覚えているだけなのよ。日本人なら当然持つべき感覚で、これを否定する方が間違っていると思うわ。私がショタコンなら、桜好きの日本人はみんなショタコンロリコンよ!!」
T「(ぽかーん)」
A「在原業平はこう詠ったわ。『世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし』、この世に桜がなければ、心乱されることなくのんびり春を満喫することができるのに。私もよく思うわ。ジャニーズJr.に小中学生がいなければ、もっとのんびりコンサートを楽しむことができるのにって。でも見ちゃうの!桜だから!儚いから!しょうがないじゃん!!見ざるを得ない!!」
T「そ、そっか。ならしょうがないね」
A「わかってくれた?さすがとっち!男の子が一番素敵なのは小学5年生〜6年生だと思うけど、とっちは中学生でも全然いけるよ〜〜〜」
T「なんかいろいろしゃべるからだまされそうになったけど、ありよしさんはそういうしゅるいのしょたこんなんだね。おかあさんがしょうたはしょたこんのちかくにいたらあぶないっていってたから、もうかえるね。ばいばい」
A「そ、そんな……!なぜいつも少年たちは私の腕からすぐにすり抜けていってしまうの……?ああでも『散ればこそいとど桜はめでたけれ 憂き世になにか久しかるべき』、そんな残酷な儚さがす・て・き」


<参考文献>

評解 新小倉百人一首

評解 新小倉百人一首