愚民159

人はただ十二三より十五六さかり過ぐれば花に山風

『蛇にピアス』金原ひとみ

芥川賞受賞作が2作とも全文掲載されてるってんで「文藝春秋三月号」を買ったのさ。なんてお得なお買い物。このお得感だけでおなかいっぱい!といっても読まなきゃ意味ないので『蛇にピアス』を読みました。非常に無気力で自意識過剰な小説。こういう系統はすこぶる苦手。ここまで極端じゃないけれど、あだち充の漫画も「無気力で自意識過剰」だと思う。だから私はなんだか苦手。質の問題ではなく、単なる好みの問題です。
私は大阪ドームでうっとりと「ここで“Do you agree?”が流れんねや〜」と言っちゃったり、テニスのラリーが成功して感涙しちゃうような人が好きなので、受賞者のことばの「がんばって生きてる人って何か見てて笑っちゃうし」というフレーズを見て、この人とは生きていく上での価値観がまったく逆なんだなぁと思った。どっちが正しいというわけでもないけどね。
もう少し刺青を彫るシーンを詳しく書いて欲しかった。それとやっぱり文章に重みが欲しい。そう思ったら谷崎潤一郎の『刺青』が読みたくなってきて、本棚をひっくり返した。私にはこっちの方がいいわ。

若い刺青師の霊は墨汁の中に溶けて、皮膚に滲んだ。焼酎に混ぜて刺り込む琉球朱の一滴々々は、彼の命のしたたりであった。彼は其処に我が魂の色を見た。

金原さんと風間さんはおない年かぁ。これを読んだ風間さんの感想が聞いてみたい。