愚民159

人はただ十二三より十五六さかり過ぐれば花に山風

少年たちの四季

中三、夏休み、友達、夜中に引っ越してきた謎の隣人……なんかもうこれだけでわくわくしますね。小説でも漫画でもドラマでも映画でも「良質な物語には良質な謎があるべき」というのが節操のない私の唯一のこだわりです。例えば金八第5シリーズが優れているのは「兼末健次郎が抱えていた闇」が極めて質の高い謎だったからだと思うんですよ。やっぱり謎がないとつまらないです。の割りにミステリはあまり読まないのですが、ミステリってどちらかといえば「良質な謎には良質な物語があるべき」って感じがしませんか?私はどちらかといえば「物語ありき」の小説が好きなんですよね。
まあ私の物語論なんてどうでもよくて、とにかく少年少女が主役のジュブナイル小説というものは良いです。短編集で4編収録されているんですが、最初の2編が良かった。それぞれ主役は違うのですが、同じマンション、萩原さん(夜中に引っ越してきた謎の隣人)という共通点があって、どちらも萩原さんという理解ある大人(というより大人と子供の間のような人)に出会うことにより、親や友達との関係の紡ぎ方を学んでいくのです。
だけど「死神になった少年」がどうにもねぇ。少年は少年のままではいられない、ということでしょうか……。でもジュブナイル小説なんだし、もう少し夢を見させてくれてもいいじゃない。最初に出てきた大塚くんも全然出てこないしな〜。「凍てついた季節」で見せてくれたコンビプレーがもう一度見たかった。それにしてもこの主人公の皆川くんは大塚くんといい森本くんといいオタクで厄介な友達を惹き付けてしまうフェロモンみたいなものが出ているんでしょうかね。可哀相に。素直ないい子なんだろうな。
もう一方の主人公、可奈子ちゃんのお話はなんだか切なかった。あのママはちょっとひどいと思う。でもこちらが主人公のお話は全体的によかったかな。
タイトルが『少年たちの四季』なので春夏秋冬にちなんだ話なのかと思ったら、別にそんなことはなかった。もうちょっと違うタイトルでも良かったんじゃないかと思う。