愚民159

人はただ十二三より十五六さかり過ぐれば花に山風

知念様のささやかな欲望(KCラジオ総括その1)

人を突き動かすものは欲望だと思います。たとえばおたくであれば「見たい」ものがあれば仕事や勉強ががんばれたりしますよね。逆にコンサートの予定がないとやる気がなくなったりします。もっと根源的なことを言えば、人間には三大欲求があって、これを満たさないと生命活動を持続させることができません。ありとあらゆる場面で、人を動かすものは「欲望」だと思うんです。
人間の三大欲求の中でもっとも人の目に触れやすいものが「食欲」です。「食欲」と一口に言ってもその在り方は様々で、大食いの人もいれば少食の人もいるし、食べられれば何でも良い人もいれば美食家の人もいる。この違いは他の欲望に通じるものも多く、個人的には人の欲望を計る上で食欲はすごく分かりやすいバロメーターだと思っています。だから、私は人の食の嗜好にとても興味があるし、そこからその人の欲望の在り方について考えてしまう。




私は「おおきくな〜れ☆ボク!!」を聴いた当初、知念様はとても欲望の強い人なんだと思っていました。この曲では知念様が「大きくなったらしたいこと」をひたすら歌っていて、だから私はてっきり知念様は欲深な方だと思っていたんです。けれども、知念様が少食だということを知ってから、知念様が欲深な方であるということに疑問が生じ、知念様の「〜したい」という言葉に注目するようになりました。

意識していると、知念様はあまりしたいことを話しません。好きなもののことも話しません。どちらかといえば嫌いなものの話ばかりしています。知念様の欲望の8割は「大野くんと〜したい」「餃子食べたい」「アイドルでいたい」と、そこからの派生物で成り立っています。あとはどうでも良いと思ってそう。知念様ってたぶんすごく欲浅な方なんです。だからたまに物を欲しがったり、何かをしたいと言ってるとびっくりしてしまう。「おおきくな〜れ☆ボク!!」だって前半はできないことを歌っているのです。


今回のKCラジオ、9/20のOPトークのお題が「行ってみたい国」で知念様は「サグラダファミリアを見にスペインに行きたい」とおっしゃっていました。めずらしく知念様のしたいことを聴けたことがとても興味深かったのですが、それ以上に圭人の対応が印象的でした。圭人は自分はアメリカに行ってみたいと語った後、こう締めます。

岡本:行きたい行きたい。いつか行こうな。
知念:そうだね。
岡本:な!


たぶん、他のメンバーなら「行きたいね」「ねー」くらいで終わる会話だと思います。なのに圭人は「いつか行こうな」と呼びかけた上で「な!」と後押しまでしているんです。そのことに妙にグッときてしまいました。

知念様の欲望はとてもささやかです。スペインに行きたいと言っていますが、長い休みをもらえたら一人でスペインまでサグラダファミリアを見に行くかと言ったら、絶対に行かないでしょう。知念様の欲望はまるで手のひらに落ちてきた雪のように、積もることなくすぐに溶けていってしまう儚いものなんです。

逆に圭人が時間があったら、行きたいところにどこへでも行ってしまうでしょう。彼にとって外国が身近なものだということも大きいですが、それ以上に圭人自身がそういう人なんだと思う。食の話に戻りますが、圭人って大食いな上に、たぶんおいしいものが好きですよね。知念様の食の好みをよく把握しているのも、自分自身が食にこだわりがあるからなんだと思います。圭人の欲望はごく自然にあっけらかんとそこにあって、圭人にとってそれを実現させることはとても当たり前のことなんでしょう。

知念様の欲望の在りかが私にはよく分からなくて、知念様がどういう風に大野くんが好きなのかもよく分からないのだけれど、知念様の欲望にはつねに「非実現性」と共にあって、その水面まで届かず海に溶けていく小さな泡のような儚さが切なくてたまりませんでした。

だけど、圭人は知念様のささやかな欲望に「いつか行こうな」と後押ししてくれました。知念様って自分の能力や性質を肯定されることは多くても、個人の感情を肯定されることには慣れていない気がするんですよね。だから、「いつか行こうな」の後の「そうだね」のトーンが少し戸惑ったように低かったんじゃないかと思うんです。そこでもう一度念押しするように「な!」と言ってくれたのを聴いて、本当に圭人みたいな人が知念様の近くにいてくれてよかったなぁと思いました。


昔のKCラジオで、ラーメン屋に行った時、圭人が知念様に好物の餃子を注文するか聞いてみたら「いやだ」と言われた、と圭人が話していたけど(相当ショックだったらしく2回も)、圭人って知念様においしいものを食べさせようとして結構玉砕していそうな気がする。だから、知念様の食の好みを細かく把握しているんじゃないかという気もする。わりと最近の雑誌で、ありたんと圭人と知念様が圭人の家の近くの餃子屋に行ったと言ってたけど、これもラーメン屋で餃子を断られた経験を活かして餃子屋を探したんじゃないか……と少し思えなくもない。


何が言いたいのかと言うと、知念様のともすればすぐに消えてしまうささやかな欲望を、まめに後押ししてくれている圭人に感謝せずにはいられないということです。冒頭で言った通り、人を突き動かすものは欲望だと思います。だから、欲望が薄くてなかなか動きたがらない知念様をごく自然に動かそうとしてくれる圭人みたいな人が近くにいてくれて本当によかった。そのおかげで、知念様の世界は広がっていくことができるんです。


9/27のラジオで圭人が「オムレツを食べれるようになった」と言っていましたが、知念様はそもそも圭人がオムレツが苦手だということ自体知らなかったようでした。圭人があんなに知念様の食の好みを把握しているのに、知念様の食に対する興味の薄さと言ったら……。こんな知念様に呆れもせず付き合ってくれる圭人って一体何なんだろう?と考えていたんですが、この2人の関係性について話すと長くなるので「総括その2」に続きます。ってゆうか(BY.ガーヤ)どんだけ総括するつもりなんでしょうね……。