愚民159

人はただ十二三より十五六さかり過ぐれば花に山風

知念様とチョコレートと知恵の実

チョコレートはあんまりでっかくないのがいいな。だって、ちゃんと食べなきゃいけないから。食べきれる量だったら、どんなチョコレートでもいいよ。

(『Wink up』2009年3月号)

バレンタインのチョコレートについて、食べきれる量を所望される知念様が地球にやさしすぎて泣いた。この頃の知念様はやっぱり覇王だと思う。

知念:あんまりね、食事の記憶ってないね。
森本:ああ。じゃね。お寿司で好きな食べ物は?
知念:お寿司で好きな食べ物かぁ……。最近ね、何が好きなのか分かんないんだよ。
森本:餃子?
知念:餃子は好きだけどーそこまであんま食べないし、最近。ほんと、何が好きか分かんないんだよね。なんてんだろ、日によって違うというか、気分によって違うし。
森本:ああ。
知念:最近、甘いものも食べたくなくなった。チョコレートとか、食べれなくなっちった。
森本:あら。
知念:そう、ちと変わってんでしょ。
森本:変わってるね、ほんとに。
知念:だから、お寿司を何から食べますかっていうのは分かんない。

(『Ultra Power』2009年4月14日)


そして、そのすぐ後にチョコレートが食べられなくなる知念様。チョコレートを食べられなくなったことは、何もかもを無邪気に信じられた幼年期の終わりの象徴にも思える。

知念様が不幸なのは知念様が聡明すぎるからなんじゃないかと時々思う。知念様はいつだってみんなに愛されて幸せそうに笑っていて、自身も幸せだと言っていて、不幸なことなんて何一つないということは私自身もよく分かっているんだけど、時々なぜか「知念様が不幸なのは知念様が聡明すぎるせいだ」と言いたくなることがある。

「3時間休んで5分やる」と言うほど勉強が嫌いだった中学生の知念様は、いつしか学年5位を取る優等生になった。神様に守られて暮らしていたアダムとイブが知恵の実を食べて楽園を追い出されたように、知恵を身に付けた知念様は自分が覇王でいられた世界から出ることを余儀なくされたのかもしれない。それは言いかえれば単なる成長で、誰しもが通る道なんだけど、幼さ故のかわいらしさや声変わり前のハイトーンボイスが売りだった知念様にとっては、普通の男の子よりも狭くて辛い茨の道だったんじゃないかと思う。そして、知念様はやっぱり聡明すぎて不幸だったような気がしてくる。自分自身の価値のありかも、それが成長によって失われていくことも、誰よりも痛切に理解していたんだろうから。

2009年の春に私は知念様を好きになったんだけど、何度振り返っても、私はこのタイミングでしか知念様を好きになれなかったと思うし、このタイミングで好きになれて良かったなと思う。